2016年6月18日土曜日

シマノ 97'メタニウムXT(銀メタ)をメンテしてみた

ご無沙汰しております。
自虐クソ野郎です。


[近況]
すっぽん手に入れました(釣ったとは言ってない)






今回は友人より依頼がありました銀メタをメンテしてみます。



【おことわり】
・趣味&独学メンテです。あんまり参考になさらぬように。
・分解メンテは自己責任!
・勘違い等多々あるかもですが生暖かい目で見てやってください。
・リール警察さんは帰って、どうぞ。





今回のご依頼は97'スコ-ピオンメタニウムXT(通称「銀メタ」)



バンタムの名を冠した「バンタムスコーピオンメタニウムXT」(通称「赤メタ」)の後継機種としてデビューし、2000年に発表されるメタニウムMgと共に一時代を築いた名機です。
この機種からネームプレートに「バンタム」の文字がなくなります。(※0)




バス釣りのテクニック多様化にあわせて左ハンドルモデルが一般化したのもこのモデルが発表されたあたりからです。


個人的には焼き入れ模様のブランキングスプール(※1)とその回転性能に驚いた印象が強いです。
(当時使用していたリールがAbuの4600番台(※2)だったのでなおのこと)


ちなみに糸を巻いた状態の重量がこちら

最近の同クラスリールとくらべてもあまり遜色無いような。




シマノ伝統の34mm/16lb-100m強スプールでミディアム~ヘビークラスのロッドまで広い範囲で対応し、当時ではハイギアの6.2:1で手返しも上々。

「巻きのカルカッタ、撃ちのメタニウム」

がプロの間でも一般的だったように思います。


ほぼ同スペックのスコーピオン1500が出たのも同じぐらいの時期だったと思いますが、樹脂部品が多用されており上位機種にあたる銀メタの方が剛性で優れています。




ただ、この時期のリールには泣き所が数箇所あり、今回預かったリールにもその兆候が見られました。


まず一つ目がレベルワインダー部


このキャップがプラスチックなのでよく割れます。

外しているのでうっすらですが、取り付けると目立ちます。

現在の機種は金属キャップになり位置も内側に移動していますが、この頃の機種はこのヒビが入りそこにバックラッシュした糸が絡み破損する事例が見られました。
まぁ経年劣化の類なんで長いこと使ってきてヘタる場所です。

画像ではクロスギア(※3)内のグリスがなくなっている状態なので砂や小石が入り放題、
日ごろのお手入れでもチェックしたいところです。


もう一つはピニオンギアの空転
これは釣りしているときにはほとんど影響なし。
リールに糸巻いた状態で強めにハンドルを回し止めると慣性でスプールが空転する現象。
ピニオンギアを抑えるパーツのバネをほんちょい伸ばせば解決します。これも経年劣化の類ですね。



ほかの症状としては
・ハンドル巻き時のゴリ感
・ドラグがすべる
・クラッチが硬い
・汽水で使ってそのままなんで、どっか錆びてるっぽい

とのこと。


メンテナンスするうえで重要なのはこの時期のリールはパーツ保持期限が過ぎており、純正パーツの在庫をメーカーが持っていない場合があるということ。
(パーツ保持期限はカタログ落ちからだいたい3~5年、それを超えて欠品したパーツは再生産されない)


なので、パーツ欠品を理由にメーカーメンテナンスを受けられない可能性が高いです。
(「ネジを壊さないと開けられない→ネジの在庫がないと組み戻せない」 とのこと)
お手持ちのリールが廃盤になって長い場合、お近くの釣具屋さんで相談するかシマノアフターに直接問い合わせてみてください。



それを踏まえて今回のメンテナンスは

・パーツ交換なし
・なるべく純正油脂仕上げ
・部品洗浄/研磨、ベアリング油脂は洗浄交換

でいきます。


それではバラしていきましょう。

..........
......
...




で、バラしたのがコチラ



細部にヨゴレが溜まってはいますが、決定的な破損部品等はなさそうで一安心。






懸案のレベルワインダー部分はすこし腐食した部分がありましたが、洗浄と研磨で何とかなりそう。



特にベアリングが深刻でしたが錆びを落とし脱脂した状態で回すと、若干の異音があるものの意外とスムーズな回転を確認




ベアリングは脱脂のために前回も活躍したスピンシェイカー+パーツクリーナーにIN
金属部品はパーツクリーナー+歯ブラシでごしごし
樹脂部品はママレモン+歯ブラシでごしごしと地道に洗浄します。



分解時には方向がややこしそうなパーツは要注意
逐一携帯で画像を残せる、いい時代になりました。





ママレモン+歯ブラシ処理完了

ヨゴレもすっきり。
メタニウムはサイドプレートも金属系素材なんでやっぱり剛性感あるな。




金属パーツの洗浄と磨きも終了(一行ですが工程として数時間)


ベアリングの脱脂と乾燥も済んだので順次注油していきます。



ごく少量噴霧しては余分な油を飛ばしなじませる。

これを繰り返すこと数回

スプールシャフトを支持するベアリングはオイル
それ以外の駆動系支持ベアリングはグリスを充填していきます。





ちなおなじみの脱脂済みスピンシェカー内部

今回はあんまり鉄粉出なかった(´・ω・`)







そして今回不具合として挙がっていた箇所、ドラグの心臓部となるワッシャーが磨耗と油を吸ってぺちゃんこになっていましたので処置。

使用時は急にドラグがすべり、急に止まるといった動作不安定が見られたので、おそらくワッシャーがぺちゃんこなんだろうなと思ってたら案の定でした。


本当は磨耗もあるので交換がベターですが、今回はパーツ交換無しなので本来の柔軟性が戻るように脱脂してコネコネ。

ビフォーを撮り忘れたのでアフターのみですが、ずいぶん良くなりました。
組み込みは極少量のグリスで行います。
組みあがり時にはしっかり効いてスムーズに動くようになっていたので一安心。


ただし、交換したわけではないので保管時にはドラグを緩めておいてもらうようにお願いしました。
これに関しては今のリールでも構造上同じなので、みなさんお手持ちのリールは保管時には緩める事をお勧めします。
(最悪ドラグワッシャーが固着して動かなくなる場合があります)




続いてクラッチ
クラッチが硬いとの症状でしたが、おそらく砂やゴミなどが付着した事と、グリスの固化が原因

ここも使用していたら外部からゴミや砂などが入ってくる部分。しっかりと洗浄してグリスアップしてから組み上げます。






最後にハンドルの固定

今回はハンドル部分は可能な限りノータッチでした。
なぜかと言うとこのハンドルノブ、溶けてねちゃねちゃになることで有名。
パーツクリーナーダメ、ゼッタイ。

このタイプのハンドルは裏からネジ二点で止めるタイプなんで、前回でも活躍したネジロック先生(※4)に再度お願いしました。
普通に締めるだけではかなりの確率で緩みます。




これにて完成、うーんいい仕上がり。
(この記事執筆中に仕上がり画像撮り忘れに気付く)









今回はオーナーさんが大事に使っていましたので内部の状態が良く、パーツ交換なしで比較的いい状態に仕上げることができました。

このリールは剛性があるためノーメンテで長く使っていた方が多く、実際は部品交換が必須になる場合の方が多いでしょう。
現状パーツは手配が困難なものが多いと思われますが、幸い中古市場でも弾数が多いモデルなのでパーツ取り用のジャンク品もよく見かけます。
構造も現在のリールと比較してもそこまで複雑ではないので、思い入れのある銀メタを眠らせている方は一度レストアしてみてはいかがでしょうか。

青春の思い出が蘇る....かも!








なお、元に戻せなくなってもメーカー対応してくんないと思いますんで、あくまで要ご検討のうえ自己責任でネ☆













※0:バンタム
そういえば今年バンタムブランドが復活するといううれしいニュースがありました。もう釣具屋さんにはバンタムの竿が並んでいます。
ついでにバンタムの名を冠したリールが復刻してくれたらうれしいですね。



※1:ブランキングスプール
糸を巻く部分「スプール」に穴あけ処理が施されているもの。ミニ四駆の肉抜きフレームみたいなもの。
軽量化につながるが強度と両立させるのが大変なんだろうなと思う。



※2:Abuの4600番台
当時Abuの主流だったパーミングカップタイプの丸型ベイトリール。ガンナーやDDL-IMAEなど多数の派生モデルがあり、プロも多く使用する人気モデルだった。
シンクロナイズドレベルワインダーという投げたときにスプールと連動して動くレベルワインド機構を採用していた為、ぶっちゃけあんまり回らなかった。



※3:クロスギア
あのばってんの溝が入ってる棒のこと。



※4:ネジロック先生
正式名称は「コニシ・アロンゆるみ止め」





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